細かい、本筋と無縁のところが好き

  • ツボ

人によって快感のツボが違うと思うんですよ。

メカが渋く動くのが好きとか、美少女がしな作るのが好きとか。いろいろ。

私の場合、なんというか。
今日の料理の、BGMのない中でただ料理人の所作、食材の料理されてゆく様とかにぞわぞわ(GSG2巻のリコのアレだ)してみたり、伝統工芸のドキュメンタリでやっぱり職人の一挙手一投足、衣擦れの音にまでぞわぞわしてみたりするような子供だったわけですよ。(今でもな。)

同様にフィクションでも、本筋に関係ない丁寧に書き込まれた生活感あふれる描写、キャラクターの何気ない仕草や小道具だけでなく、キャラクターの他愛ない(本筋に寄与しなかったりする気安い)会話とかが大好きです。

なわけで、本筋の出来とかメカデザインの出来とか公証の出来はさておけてしまったりします。私の場合。

ちなみに、かなりトミノ信者だからめがね狭いので覚悟。

そんな視点から見ると、実はエヴァは結構おもしろかったわけです。特に前半から中盤にかけて。終盤、痛いのの知り合いとかになってくるとちょっとつらかったりしたけど、それでもラスト2話の、精神世界に完全に入ってしまうまでは丁寧な情景描写とかがありましたのでね。

ブレンはまた良くできてたんだな、これが。

もののけ姫の「生きろ」に対抗してつけられたスローガン「頼まれなくたって生きてやる!」が効いたのか(笑)、登場人物みんなが細々とした部分でも生き生きとしていて、なんとも幸せな気分になれたものです。ユウとヒメの一筋縄じゃいかない掛け合いを中心に台詞がぽんぽん飛び交うし。

お話のほうは、エヴァに対するアンチを目指したという割に、なんというか…「ハッピーエンドにしたエヴァ」という感じ。見ればその感覚はわかってもらえるかと。

エヴァも精神群像劇だしね、生活描写も凝ってたし、アクションとしてのおもしろさとか謎かけの具合とか謎残しの具合とかも斬新だったし………「各要素の配置は同じ」でその味付けが違うっていうのは、それはアンチテーゼとは言えない気がするのね。

そうね、「エヴァの空気は好きだけど後半の奴らのうじうじっぷりで疲れた」という人はブレンも見てストレス解消してください。ある意味、まさにそのためにこそ作られたような作品なので(笑)。

(しっかし、この番組もヒゲも「癒し」を目的に作りはじめられているわけだが、癒しの極みはやっぱりキングゲイナーこそが体現してる気がするのだが………。ブレンは「病んでいる」スタートラインから始まってるし、ヒゲもそんなところがあるからなあ………「病んでる人を癒す目的の物語」は「病んでる人を癒す過程を描いた物語」であればよいわけではない、というか………)

ただ、物語のフローをものすごく奇想天外にして視聴者を毎回あっと言わせていく、というところはすごくて、それが後半に行くに従ってエスカレートしていくのね。その精神は新トミノ3連作にずっと受け継がれていく(しかも洗練されて)わけですが、結構はらはらどきどきさせられます。

だけどその奇想天外プレッシャーがまだコントロール出来るレベルでないみたいで、ラストに行くにつれてテンションが張りつめっぱなしになってしまって、気疲れしてしまうところがあった感じがします。最終話もなんか、相当駆け足な感じで消化不良を起こしそうな感じ(知り合いで一人そうなってしまったやつがいます)。

ついでに、登場人物の掘り下げを消化しきれなかったところがあります。バランス悪い感じ。

まあ、おもしろいですよ、ほんと。
ただ、これを見る人は、そのあとちゃんとターンエーガンダムキングゲイナーを見てバランスを取った方がいい(笑)

ちなみに、戦争じゃないんだよね。このアニメの描いてるモノは。
もっと政治的な位置づけは小規模。
大量の核ミサイルが飛んだりするけど(笑)

これまた、輪をかけてよく作り込んであった。

大軍が動くくせにますます戦争漫画ではなく、生活+武力衝突・小競り合いの漫画になっているところも見逃せない。「ガンダムと言ったら大規模戦争オペラだっ!」という筋にははっきりいって食傷気味になること請け合い。でも私みたいな、牧歌的な部分も楽しいと思える視聴者には、とてもおもしろい作品だったのです。

ヒゲが物議を醸したけど、こういう楽しみ方においてはヒゲがかっこいいかどうかなんて関係ないのです。むしろ「変だからこそ印象にのこるほほえましいアイツ」って感じね。

お話の展開の深さ、先の読めなさは洗練され、その織り上げ方は芸術的ですらあります。はらはらどきどきの品質は保証できます。もしあなたがヒゲと牧歌的で前世紀的な世界観を許容できるなら、です。

でも、異文化の衝突をまとめ上げる過程には、個人的には最終的にいまいち納得のいっていないところもあります。(まあそんなの二の次だし………とかいうと刺される?)

これは1年やったので、キャラは多かったけど盛りだくさんのエピソードで掘り下げはしっかりやれてますな。

これ、初めて見たとき「本当に30分番組か???」と疑った。開始10分で時計を見て「うそまだこれしか時間たってないの??」と。キングゲイナーを語る上で、この展開の速さ、話の濃さ、すなわち「タイムマジック」ははずせない要素です。

ブレンのときも、1話1話が30分とは思えないと感じたんだけど、このキングゲイナーにはかなわない。

「1話2戦闘」というスタイルを義務づけてアクション娯楽性を強化しつつも、タイムマジックでキャラの掘り下げや日常描写を怠らない。実際のところ過去2作品のようなゆったりした生活描写はものすごく減ってるんだけど、逆に、主人公と敵の主目的自体を生活に密着したところに置くことで、がむしゃらにストーリーを進めることそのものが生活、っていう状態にしている(笑)

話自体が大枠に沿って進むものでなく、キャラクター達のエネルギッシュな疾走の結果として転がっていく形で作られていたので、生き生き感のみでお話が成立しているようなものです(笑)

客観的にフローを見れば典型的なパターンにはまってることも多いんだけど、それでも引き込まれてしまう魅力があると思うわけです。

代償として、いくつかの要素が投げ出されているわけです。メカメカ物体とか、その公証(リアルさ)とか、大戦争要素とか。(ターンエーに輪をかけて小競り合いっていうか、降りかかる火の粉を払うことしかやってないし(笑))
そういうのをお求めの方は別の番組で補充しないといかんですが、たまには骨休めもしてみてはいかが? そういう番組ね。大好き。