ひょこひょこ

忙しく休日仕事して花火大会を見ることもなく家路につくと、駅前のバス停にセミの幼虫がさまよい出てきた。

歩道に向かってとことこ歩いているので、踏まれたら可哀想だと思い脇の茂みに寄せてやると、今度は車道に向かって歩き出してしまった。しかたがないので自宅まで連れていくことにする。

手にのせても、この幼虫は延々と歩き続けた。ひたすら指の上を腕の上をまっすぐ歩いていく。障害物があろうがお構いなし。ときどき反対の手にのせ替えたり、指を輪にしてつないだりして歩く道を確保してやらないといけない。きっと今日が羽化の夜なのだろう。ちょうど良い木によじ登れるまでひたすら歩くに違いないのだ。

なんとか家までたどりつき記念撮影。撮影中も歩き回るから大変。なんともがむしゃらなやつだ。

撮影してから庭に放つ。茂みに落としてやると、かさこそ、と音を立てながら、またひたすらに歩き始めた。耳をすませば、庭のあちこちでかさ、かさ、と音がする。今夜こいつと同じように這い出てきたセミの幼虫がほかにもいるのかもしれない。…暑い夏がやってきた。