ほむらの企みが明らかになって

え、えええええーーーー! と思いましたが、
来たわー−−−−!とも思いました。
冒頭に書いた通り、神になっちゃったまどかにほむらが物申すとこが見たかったわけですよ。

まどかの本編の最後のあの選択は、無償の愛ではある。
あるけれど、あの選択では、ほむらの渇望は満たせない。
本編のあの別れは、ほむらにとっては、まどかとの死別に近いのだ。
それを、ほむらに押しつけた形になっているのだ。
これは、まどかからの一方通行的な愛の形である。
…まどかにとっては偲ぶ愛なのだが。
(ほむらに対してわかってほしいという甘えでもあるんだよなぁ)

ここが前後編映画を見たあとのもやもやの正体だった。
(これを明確に知覚できたのは、新編を見たからである。)

TVシリーズ見終わった頃、続編があるなら、ほむらがまどかのことを思いながらも痛みを忘れる方向に成長する物語もありえるのかな、なんて思っていた時期(本当の現実に回帰するエンド)もあったけど、
でも、
この物語は、途中に差し挟まれたまどかとの会話でもピックアップされたように、その方向には行かなかった。

鞄持ちに成り下がった(自分で言ってるもんな)さやかをあざ笑いながら、
まどかを独り占めしようとするほむらが、
ものすごく、背徳的でサディスティックな快感を与えてくれるのだ。

ああ、子供のころ、悪役に蹂躙されるヒーローを見て、こういう感覚、感じたなあ…
やれやれ、やっちまえ、ほむらー! 状態である。

どっちかというと、私は独占欲や嫉妬は強いほうなので、あの愛の形は、あるある、あるよなー、って思う。
これは、まどかの一方通行の偲ぶ愛に対する、ほむらの返歌だ。
でも、返歌なので、これもまた一方通行の愛である。…相手の本当の願いを抑圧して、束縛して手元におくというのは。

しかし、しかし。本当にすごいのは、このあとのシーンだ。…

ほむらは、自分の行為をどう思うか、まどかに間接的に聞いてしまうのだ。
やっぱりまどかが好きなのだ。(どんな返事が返ってくるかほぼわかっているほむらの表情たるや…!)
しかしまどかは、きっぱり、振る。挙句、ほむらの掌中から飛び出そうとするのだ。
あわてて押しとどめるほむらだが、
ほむらは、自分の独占欲が、自分の愛の形が、相手に届かないかもしれないことを悟る。
(届かないと悟ったかもしれない。これは人により解釈の余地が分かれるように描写されていると思う)
そして、それでも、そのままのまどか、自分の愛を否定するまどかを、彼女のやり方でではあるが、愛そうとする。

魔女化ではなく、
悪魔化でもなく(己の欲を素直に自覚する、それも成長ではあるが)、
この瞬間、悟ってしまった瞬間こそが、ほむらの本当の成長である、と思う。
リボンを返すところ。…あなたをあなたのまま愛そう。たとえ私を容れてくれなくても。と感じたのだ。

これがすごい。
とにかくすごい… 偲ぶ愛の二重奏である。
悲しい形でだけど、愛が一方通行ではなくなろうとしている。
お互いにお互いの愛の形を認めないけど、でもお互いに愛をつきつけあって、相互干渉しようとしているのだ。
そこで、今回の物語が終わる。

無償の愛と、欲望と、突き合せて、折り合いをつけて、人と人は愛し合うのです。
それが、今から、始まるんだな、と。
物語の世界観上、それはもう殺し合いになるのかもしれないけど。
始まったら、刹那で終わってしまうのかもしれないけど。
それでも、
やっと、ことごとく、すれ違い続けていた二人が、向かい合ったんだな、あの最後の一瞬、向かい合ったんだな、ここから始まるんだな、と思えたのだ。

女性同士の友情の体裁で、性欲をさっぴいてる分、すごく雑味のない、クリアで、重い恋愛の葛藤が描かれてるよな、と。
こいつぁ、…恋愛の話ですよ。
中学生ぐらいの年齢に患う、ピュアすぎる、恋に近い片思いの友情の姿を借りて、…プラトニックな恋愛の話をやったんだ。

上映終了時に、「ヤンデレ…」と聞こえてきたけど、
うん、この程度ヤンデレじゃないよね…
あの青年も、いつか、知ることになるだろう。(若い学生さんふうの男の子が多かったですね)

うん。

まあ、もそっと歳いったら、「若いよね、青いよね…!」とも思えるんでしょうが…
逆に「痛いなー!」と嫌悪するには、ちょっともう歳をとりすぎちゃったかな。

もちろん、あのラストで、「2人が決定的にすれ違ったのだ、破局だ」ととることもできるけど。
でも破局したからって、「じゃあ明日から好きじゃありません」ってことではないのです。
「好きって気持ちはなくならないの!」なのです。

だから、あれはバッドエンドでもハッピーエンドでもない、ふたりの関係性の、いったんのゴールであり、またスタートラインなのだと、思うのです。

ほむらは、強大な力ですべてを我が物にしたかのように見えるけど、本当に手に入れたいものは手に入らなかった。
最後のシーンに、がさりと音を立てて現れたのが、まどかではなく物言わぬアレ、というのが象徴的。
でも、恋愛って手に入れる・入れないじゃないわけで…
ほむらは、身を危険に晒しているようなアクションを繰り返していたけど、罰して欲しそう、とも、そうすることでまどかとインタラクションすることを望んでいるようにも、見えたな。それでもまどかは来ないのか?来るのか?

来ないと見ることも(ゴールという解釈)、あるいは、何かあそこから関係性が動き出すと見ることも(スタートという解釈)
どちらもできると感じたのでした。

…というわけでー、
これ、もうこれで付け足すもの何もないくらい完璧に終わってると思ったんだけど、…どうかな?(笑)
二次創作の余地はいっぱいあるだろうけど、

…本編チームがこの先、って考えたときには…
えー? このダークヒーロー化したほむらさんを始末する話?
…それ、面白いのかなあ…
ほかにもいろいろ思い浮かぶけど、どれもどっかで見たような話で…

いや、まあ、やるとなったら予想はいくらでも裏切ってくれるでしょうけどね!
(今回も予想はばっちり裏切りまくってくれたわけだし)
「外に開く」(忘れる、癒やされる方向の)話はそれはそれで見てみたいけど、やったらそれでIPとしては終わっちゃうだろうしなあ。