甘いにおい

小雨の中を出勤中、駅前にさしかかったら、「ばしゃあっ!」と大きな音とともに頭上から目の前に何か降ってきた。同時に、ふわりと広がる甘いにおい。

駅前のロータリーに植えてある楠の枝を落としていたようだ。

楠の香りを嗅ぐと、小学校時代を思い出す。若々しくて、すこしつんとする、独特の香り。私が通っていた小学校の校庭には、巨大な楠(3階建ての校舎と同じくらいの高さまである巨木)が2本、1本は校庭のど真ん中に、1本は校舎に寄り添うようにそびえていた。幹は太く、子供が5〜6人手をつないで囲んでも反対側に届かないほど。おかげでよその学校に比べて校庭は狭く、行事やスポーツのときには必ず邪魔になるのだけれども、楠にまつわるお祭り行事もあったし、私は好きだった(ほかの生徒はどうだったか知らないけれども)。

落ちた葉や枝や皮を集めて手の中でもむと、ふわっと香りが広がるのが面白くて、よくいじっては遊んでいた。でもちょっとかゆくなるんだよね。懐かしい思い出。